ここまでくるとかなり日本酒に興味がでてきたであろう。
で,中級編じゃ。さらに深い世界へ分け入っていくんじゃ。
日本酒造りの行程の中で,「もと」というものを作る過程がありましたが,これは酒母とも呼ばれ,麹を冷水でよくかき混ぜて作った水麹に乳酸と酵母を入れてさらにかき混ぜ,その後二時間ほど置いてから適度にさました蒸米を入れて練り,二週間ほどおくとできあがります。
ところで,水麹に加える乳酸ですが,通常は既成の醸造乳酸を使うのが一般的ですが,自然に乳酸ができるのを待ってもとを作る方法もあります。この方法でつくったもとを「生もと」といい,できあがるまでに約一ヶ月程度かかります。生もとを作る作業は大変手間がかかり,特に蔵人たちが大きな櫂をつかって蒸米をすりつぶしていく山卸(やまおろし)という作業は大変な労力を要します。「生もと造り」とうたっている酒はこのような手順を経て作られているという意味です。なお,吟醸酒では一般的に醸造乳酸を使ったいわゆる速醸もとを使うようです。
※漢字で書くと,さけのとり(酉)へんにもと(元)と書きますが,Webでは使えない文字のようなので,あえてひらがなで表示しています。お酒の瓶には漢字で書いてありますので要注意です。
石川県の有名なお酒に「天狗舞」というのがありますが,この「天狗舞」に「山廃仕込純米酒」というのがあります。この「山廃仕込み」というのは,前述の生もとを作る過程の中の山卸という作業を省略したものです。精米歩合の向上と技術の進歩により可能になりました。
最近では日本酒のビンの裏側にラベルが貼ってあり,その酒のいろんなデータが記載されていることがあります。その主なものが,「日本酒度」「酸度」「アミノ酸度」の3つです。
| 日本酒度 | 酒に含まれる糖分を計測したもので,一般的には+(プラス)が高いほど糖分が少なく,−(マイナス)が高いほど糖分が多い。従って,+(プラス)が高いと一般的には辛口とされる。 |
| 酸度 | 酒に含まれるコハク酸,リンゴ酸,乳酸などの酸の量で,酸度が高いほど辛口になる傾向がある。 |
| アミノ酸度 | アミノ酸は酒の旨みの元になるといわれるもので,数値が高いほど濃厚な旨味になるといえるが,高ければ高いほどいいというものではなく,かえって雑味の原因となってしまうこともある。 |
日本酒度が+(プラス)に高くても,酸度が低いとそれほど辛口に感じないことがあります。酒の味は,日本酒度,酸度,アミノ酸度の3つのバランスで決まってくるもので,複雑に関わり合っているため,単独で判断することはできません。あくまでも一つの目安として参考にするだけで,あとは自分の舌で決める以外にないといえます。
酒の8割は水なので,酒の味は水に左右されるといっても過言ではないでしょう。一般的には,酒造りに適した水には,カリウム,リン酸,マグネシウム,カルシウムなどの成分が多く含まれており,反対に鉄分やマンガンを多く含む水は酒造りに適しません。
水には硬水と軟水があり,一般的に硬水だと辛口の酒,軟水だと甘口の酒ができやすいといわれます。
ビッグコミックスピリッツに連載中の人気コミック「美味しんぼ」のある話で,日本酒の売り場がワインのそれに比べるとお粗末で,如何に日本酒が日本人に理解されていないかを指摘される場面がありますが,確かに一流デパートといわれるところでも日本酒は明るい陳列棚に普通の商品同様に並べてあることが多く,少し残念な気がします。
日本酒は,日光と高温に弱いので,できるだけ薄暗く温度の低いところに保存します。特に生酒は,酵母菌が生きているので必ず冷蔵庫で保存します。冷蔵の必要がない純米酒や吟醸酒などでも,開栓後の飲み残しは小さな瓶に移し替えて冷蔵庫に入れるのが理想的です。
参考文献
九州銘酒紀行 2000秋号(西日本新聞社編)
夏子の酒 1巻〜6巻(講談社刊)
日本酒カタログ755(永岡書店刊)