会報25

特産品づくり



鹿児島県の県政記念館を斜め右方向から見た感じ。
後ろに見えるのは城山公園あたり。

 特別編で「農漁村加工グループの製品はロットがまとまらず販路が限られている。」旨書いておりましたところ、壱岐農業改良普及センター勤務の生活改良普及員T橋Y子さん(24歳)から感想と仕事でのご苦労を著したメールを頂戴しましたので抜粋をご紹介します。

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 今、ゆずの香で有名な柚子加工組合が新商品の開発としてゆずポン酢の商品化に取り組んでいます。去年からずっと加工所に通って何度も試作を行いました。自分たちの中で味がうまくいったかと思うと、実際行ったアンケートの結果では、味の好みは個人差が大きいし、賞味期限や包装形態、ラベルの問題が発生するし、かと思うと、柚子の成分の浮遊物が出て、その除去は難しい(除去すると香りがなくなり、大変時間がかかる。)し、価格の設定も簡単なことではないし、一苦労しています。だいぶんできあがりつつあるのですが、最後の壁として係長が言う流通の壁が待ち受けています。この農産加工組合は、珍しい男性の組合なのですが、たいへん良いおんちゃん達の集まりですので、是非、成功させてほしいと願っている、今日この頃です。

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 大変プロ意識と責任感にあふれた仕事ぶりがうかがえ、とても感心します。私「ゆずの香」飲んだことがないのでこんど試してみます。

 ところで、食味や食感についていろいろご苦労されているようですが、これは書いていらっしゃるとおり十人十色なので万人を納得させることはまず不可能です。あんまりアンケートを気にして最大公約数的な商品を作るとかえってつまんない物になることが多々あります。どこで誰に売ろうとしているかがポイントで、同種の製品とどう差別化するかが大切になります。

 例えばユズをつかったポン酢商材は、大手でいえばミツカンから、地場ではチョーコーからも出ているわけですから、もしそれらと競合する売場での販売を目指すのならば、それら商品との違いを際だたせる必要があります。そうではなくて例えば特定のお土産品店や加工組合直販のみを考えるのならば、地域性と手作りのあたたかみを全面に押し出していくべきでしょう。

 食味については、うまいかまずいかの二者択一で決めればいいと私は思っています。結局そんなに立派な舌の持ち主はいないんだから。それよりも製品にありがたみを持たせることです。

 ユズ成分の浮遊物の問題も、「ユズ本来の風味を大切にするため、あえて除去していません。」と一言明記していれば、たいていの人間は納得して、むしろありがたがるのではないでしょうか。

 以前全日空機内誌「翼の王国」の全国老舗紹介で、第一番目に福砂屋が載っていて、「(最近では東京でも売っているでしょうが)本店で買ったのできっとおいしいでしょう。」と添えて知人に送ったエピソードが披露されていました。東京の製品も本店の製品も品質は変わらないでしょうが、もらった人はありがたがるでしょうね。

 また、新幹線開通後、東京日帰り圏になった東北各県は、特産品を都会に送って売るのではなく、食べたかったらここまでおいでのやり方に変わっています。

 おいしいポン酢商材ができたら島内の料理屋さんや民宿・旅館にサンプル配って、焼き魚や鍋物や壱州豆腐の冷や奴を出すとき、「この壱岐で作ったゆずポン酢でお召し上がり下さい。」と一言添えてもらえれば、付加価値絶大でしょうね。料理バラエティの制作が得意なハウフルズに「本日の特選素材」として売り込めるようなストーリーをつけるのも大切です。

 いずれにしても一つの商品を世の中に出すのは結構大変です。T橋技師の健闘を祈ります。秋になったら完成したポン酢で、私が昔担当した「ふぐ」商材の鍋をつつきながら美味しいお酒を飲みましょう。

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