鬼と酒と

新潟県の伝統工芸品だそうです

 何年か前に放送されていた大河ドラマ「秀吉」の原作は経済企画庁長官堺屋太一氏の「鬼と人と」が下敷きになっていたと思いますが、お酒と鬼にも浅からぬ因縁があります。

 静岡や岐阜をはじめ各地に「鬼ころし」という名前のお酒があるのをご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、これは「源頼光」の鬼退治に由来するものです。丹波大江山に住み都に出没しては悪事を繰り返す鬼に酒をたらふく飲ませて酔いつぶしたうえで退治するお話で、退治された鬼の名は「酒呑童子」です。京都には酒と京女が大好きだったというその鬼の名前をそのまま戴いた「酒呑童子・京娘」というお酒もあるようです。

 鬼退治伝説は基本的には異民族や別部族との戦いを象徴しているとする説もあり、「酒呑童子」は「シュテンドルフ」のような、今で言うとドイツ的な人名が表記されたものではないかという人もいます。

 ちなみに頼光四天王と称されるのが「渡辺綱」(羅生門でも鬼退治をしている)、坂田金時(ご存じ足柄山の金太郎)、碓井貞光、占部季武の四人です。

 壱岐も鬼ヶ島とされ、豊後の国から派遣された百合若大臣という侍大将が悪毒王というボスに率いられた鬼軍団を退治した伝説が残り、倒された鬼の首が百合若の兜に噛みついた図が鬼だこのデザインになっていることはご存じでしょうが、これと全く同じ構図が、頼光の酒呑童子退治を描いた絵巻にもでてきます。話のルーツはおそらく共通しているのでしょう。

 奈緒子ファンクラブ顧問の品川先生は松浦源氏の流れだそうで、小学館に背景写真を提供しているのが「渡邊」氏、島内の新聞やミニコミに壱岐の歴史的価値についてよく投稿されている郷土研究家「占部」氏も設立メンバーの一人とこちらも共通点がありますね。

 話は飛びますが、永井豪の漫画に「手天童子」という優れた作品があります。永井豪という人も長い漫画家生活の中で、数々のヒット作を世に送り出していらっしゃいますが、まともに完結したのはこの作品と「デビルマン」だけで、他の作品は中途で投げだし第一部完のままという、アイデアを膨らませすぎて風呂敷をたためなくなることが多い作家です。

 ただ、見事にたたんだ前記2作品の完成度がずば抜けて高く、彼に心酔している小説家やアーテイストはたくさんいます。「馳星周」は明らかに「デビルマン」の解体・再構築作業により新宿を舞台にした暗黒小説をヒットさせていますし、最近出たイエモンの新譜のジャケットは永井豪がイラストを担当しています。紹介した2作品は世紀末にぴったりですので是非読みましょう。

 お酒の話からだいぶん離れましたが、最後にひとつ、堺屋太一に「鬼」とされた織田信長は下戸だったとのこと。軍事の天才もお酒には弱かったということでしょうか。  

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