味の決め手は?

長岡市の大花火

 前回味覚について書きましたが、今回は味を決める要素について話をすすめていきます。

 味の要素は原料である「米」と「水」、味を決める「酵母」、品質管理する「杜氏の技術」プラス、やはり自然には逆らえない「気温」があります。

 気温の壁は大きく、日本酒造りの南限は熊本の山間地までです。大分の銘酒「西の関」の蔵では夏の気温上昇からお酒を守るため空調に最新の注意を払っているそうです。鹿児島や宮崎でお酒を造ろうと思っても、ひと夏越すための温度管理に費やす経費が大きすぎてペイしないでしょう。だから南国ではやむなく?焼酎を作っているのです。

 日常的に食べられているお米は酒造りは適していません。例外的にササニシキがお酒造りに使われているぐらいで、基本的には山田錦に代表される酒造好適米と呼ばれるものが使われます。この酒造好適米を酵母の力で醸すことでおいしい日本酒ができあがります。

 酵母には天の恵みにより偶然その酒造元に住み着いておいしいお酒を作り出す「蔵付」と呼ばれるものも有ります。この幸運に恵まれているのが秋田の「新政」や長野の「真澄」です。新政酵母は6号、真澄酵母は7号酵母と呼ばれています。では「蔵付」に恵まれていない蔵はどうするかというと、人気の酵母の頒布を受けて酒造りをすることになります。最近は7号酵母や熊本県の「香露」を醸す9号酵母が主流で、そのフルーティーな風味が人気となっています。

 お酒のラベルに「YK35」という表示がある銘柄を見た方もいらっしゃるかもしれませんが、これはにY=山田錦35%精米をK=(熊本)9号酵母で醸して作った最高級品ですよという自負が込められています。参考までに最初にこの標記を行ったのは新潟県佐渡の「北雪」という蔵です。

 水については全ての蔵が山の麓に湧く「伏流水」を使いお酒を作っていると考えていただいてよいと思いますが、水の質にはご存じのように軟水と硬水があり、この違いも味に変化を与えています。旭川の「男山」という蔵元は水を求めて大阪伊丹から北海道に移転したそうで、酒造りも大変です。

 さて、米が良くて水が良くて気温が低くていい酵母を使っても杜氏を初めとした蔵人の技術なくしておいしいお酒はできません。蔵人のほとんどが農村からの出稼者のため地縁的特徴があり、出身地から丹波杜氏とか南部杜氏とかの酒造りの流れがあります。

 九州・山口で活躍している杜氏は長崎県北松浦郡小値賀町出身の方が多く、小値賀杜氏として評価されていることも長崎県人として知っておいたほうがよいでしょう。お酒造りは自然と人間の共同作業ですね。

 次回から、いよいよ全国美味しい酒巡りです。乞うご期待。でも書けるかな? 

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