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新しくて近代的な新潟空港
新潟県には140もの蔵元があるといわれる

 全国美味しい酒巡りで最初に取り上げる銘柄は、私に本当の日本酒というものを教えてくれた山形県の「出羽桜」です。

 15歳のころからメンズ・クラブ愛読者で、アイビー&トラッド大好きのアメリカ東海岸かぶれの私は、大学に入るとメンクラで紹介されていたバーボンにこだわり、医学部の友人が実家から持ち出してきたジャック・ダニエルズやワイルド・ターキー(いずれも当時は1万円位していた。)を若さにまかせてガンガン飲んでいました。

 もちろん貧乏な時はイモ焼酎のお湯割りで、湯豆腐なぞをつつきながら工学部の先輩とプロレスやロックについて朝まで語り、早朝に再放送されていた「アルプスの少女ハイジ」や「悟空の大冒険」を見てふらふらしながら家路につくこともしばしばでした。

 そんなこんなでお酒=蒸留酒の4年間過ごし、まかり間違って長崎県にお世話になるまで日本酒を飲んだ記憶は全くありません。就職と同時にあの臭くてべたべたした熱燗責めにうんざりし、組合発行の県庁坂新採紹介のとき、不遜にも「日本酒は嫌い」宣言をしたくらいです。

 とにかく宴席のお酒のまずさだけが脳に記憶され、こんなものは飲む価値も必要もないものだと思っていました。

 2年間の長崎勤務の後五島支庁へと転勤。当時の私は肉食人種で魚はほとんど口にしない人だったのに配属されたのが水産課。まずは魚を食べないと仕事にもならんということで仕事先で出されたイワシ料理を無理して口に入れたとたん、「あれ、美味しいぞ。」と目から鱗が落ちました。ナマコしかとれない?大村出身の私は両親共稼ぎだったためウナギ料理しかない?柳川出身のばぁちゃんの賄いで育ったのですが、どうやら新鮮な魚とうまい魚料理にそれまで巡り会っていなかったようです。

 五島で魚のおいしさには目覚めた私ですが、相変わらずお酒は蒸留酒の人でした。3か月にいっぺん位は福岡の大学病院で働き始めた友人のところに遊びに行っていたのですが、ある時連れて行かれた西中州の「舌(べろ)・高山」で「ちょっとこれを飲んでみて。」と店主に勧められたのが「出羽桜・大吟醸」です。

 いまでこそあちこちの地酒取扱店で定番になっている出羽桜ですが、当時九州では入手困難なものだったそうで、おまけに大吟醸ともなると今でもなかなか手に入りません。封を開けグラスに注がれた瞬間たちのぼった何とも言えない香りに驚き、口に含んだときのさわやかですらある風味にびっくり仰天、感動で涙をぽろりとこぼしてしまいました。

 24歳にして本当の日本酒と魚のおいしい組合せに出会ったのです。

 出羽桜は、その華やかな吟醸香で特に女性に人気があるようです。いわゆる「山系」のお酒で、白身の魚や和食はもちろんイタリアンとの相性も良いのではないでしょうか。壱岐でも「三木屋」や「目良新光屋」で「一路」や「一耕」、「生酒」あたりは容易に手にはいります。そのフルーティな風味を皆さんどうぞご堪能ください。
 
 ところで、最近のメンクラと昔のメンクラは、出版社いっしょですけど内容は全く別物です。成長著しい「ユニクロ」の店作りや映画ポスターを使ったディスプレイのセンス及び商品構成が当時のメンクラのコンセプトを象徴していると考えていただければわかりやすいのではないでしょうか。私と同年代の社長もメンクラ読んでVANやブルックス・ブラザースやJプレスの服着て、LLビーンのハンティングシューズやコールハンのペニー・ローファー、トップサイダーのデッキシューズ履いて、映画見て洋楽聴いてバーボン飲んでたんでしょうね。柳井社長、アメリカン・トラッドもやってくれないかなぁ。

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